発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
視覚刺激を媒介とした幼児の和音の好み
福崎 淳子
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キーワード: 幼児, 和音, , 視覚刺激, 好き-嫌い
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1993 年 4 巻 2 号 p. 99-107

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抄録
本実験の日的は, 幼児を対象に和音の「好き-嫌い」を調べる上で, 言語のみの手法と比較し, 手がかりとして視覚刺激を用いることが有効であるか検討することである。35名の幼児を対象に, 実験第1部では, 視覚刺激における好みの尺度としての有効性を調べるために, 赤・青・黄・橙・緑・紫・茶・自に着色されている8枚の正方形の色ボードと同じ色で着色されている8個のたまご模型の好みについて検討した。続く実験第2部では, 視覚刺激として8個のたまご模型を用い, 聴覚刺激としてピアノ音による5つの協和音 (完全協和音 : 完全四度 (C_4F_4) , 完全五度 (C_4G_4) , 完全八度 (C_4C_5) , 不完全協和音 : 長三度 (C_4E_4) , 長六度 (C_4A_4) ) と3つの不協和音 (短二度 (B_3C_4) , 長二度 (C_4D_4) , 長七度 (C_4B_4) ) の8和音を用い, 和音の「好き-嫌い」をことばで答えさせることと, 和音と一致すると思うたまご模型の選択をさせた。実験第1部では, たまご模型は, 正方形の色ボードに比べるとより色の好みの差が認められ, 和音の好みの尺度として色ボードよりも有効性の高い視覚刺激であることが確認された。実験第2部では, 言語のみによる反応からは和音の好みの違いを引き出すことは幼児の場合難しく, 特に不協和音について幼児がどのような好みを感じとっているのかを判断することが難しいと思われた。これに対し, 視党刺激を手がかりにすると, 好きだと思うたまご模型と完全協和音 (C_4F_4, C_4G_4, C_4C_5) ・不完全協和音 (C_4E_4, C_4A_4) が対応し, 好まないと思うたまご模型と不協和音 (B_3C_4, C_4D_4, C_4B_4) が対応する傾向が認められた。以上の結果より, 幼児を対象にした和音の好みの実験を行う時に, 視覚刺激を手がかりとすることは言語のみに比べより有効と考えられる。
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© 1993 一般社団法人 日本発達心理学会
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