抄録
本論文は、乳幼児期におけるアタッチメント研究とその測定法に関する現在の動向を明らかにしたものである。ストレンジ・シチュエーション法は, 過去20年間使われてきたが, 現在では, いくつかの点で問題があることが分かってきた。すなわち, Bタイプが最も適応的であるという前提や, アタッチメント・パターンに差をもたらす原因や, アタッチメント・パターンの後の発達への関わりについて, 従来, 考えられてきた知見を覆す研究結果が出されたり, また, アタッチメントを内的ワーキング・モデルとしてとらえる生涯発達的な観点に立つ新しいアタッチメントの概念が注目されている。さらに, わが国では, ストレンジ・シチュエーション法はアタッチメントの測定法としては妥当でないことが, 様々な研究者によって証明されている。アタッチメントの測定法として新たに開発されたアタッチメントに関するQ分類法は, 現在のアタッチメント研究の動向に一致するものであり, かつ, わが国の乳幼児のアタッチメントを測定する際にもいくつかの利点を持つ。本論文では, Q分類法によるアタッチメントの測定法が紹介され, 今後のアタッチメント研究に対する有効性が論議された。