抄録
人間中心設計の観点から,上肢運動モデルは機械操作を支援するパワーアシストやコラボレータなどの人間-機械調和系の構築に欠くことができない.著者らは先に,位置決め作業において,視覚により手先と標的の誤差を認識し上肢を動かす運動を表した「視覚フィードバックモデル」を提案したが,ステップ応答などの急速な動作の再現性には対応できていない.これに対し,手先が目標を追跡する随意運動制御における急速運動と緩徐運動に関する知見から,視覚情報とむだ時間のない力覚情報に基づいて上肢のインピーダンスを調整するフィードバック構造を持つ新たな「視覚・力覚混合型フィードバックモデル」を提案する.次に,ディスプレイ上に提示される仮想目標指針に1軸リンクを追従させる操作実験を行い,提案モデルのパラメータを同定した後,応答特性が改善されることを確認した.また,操作力の観点からも,提案モデルの妥当性を検証した.