抄録
近年,労働者の精神的ストレスは増大しており,ストレス評価機器の開発が求められている.我々はこれまでにストレスの定量評価のための研究を行ってきたが,過去の結果において,作業後の生理反応が作業前の状態に完全に回復しない場合が認められた.その原因を探るため,本研究では,作業時および作業後の感情状態と生理反応の関連性を明らかにすることを目的とした.18名の健常な男性に4段階の難易度に設定した計算課題を遂行させ,作業時および作業後に生じた感情状態と生理量を記録した.その結果,作業時には,RR間隔(RRI)と皮膚電位水準(SPL)が満足感や集中度の因子と関連する可能性が示唆され,鼻部血流量(TBF_N)と指尖容積脈波振幅(PTG)が低下した.作業後では,どの生理量と感情状態にも関係は認められなかった.また,RRIとSPLは作業後すぐに回復したが,TBF_NとPTGは回復に時間を要することが示唆された.