2010 年 46 巻 5 号 p. 317-324
国際標準ISO13857:2008は,上肢や下肢が危険源に到達することを防ぐための安全な距離等を規定した規格である.本研究では日本人被験者を用いてこれらの到達距離を測定し,この規格で規定されている数値が日本人に適用可能かどうか検討した.3次元動作計測装置を用いて,13名の若年成人男性の上肢上方リーチングおよび種々の柵高での柵越リーチングの動作を計測した.得られた動作データから,上肢上方到達高あるいは柵越到達距離を求めた.上肢上方到達高についてはISOの規定値を超えることはなかった.しかし,柵越到達距離ではいくつか項目でISO規定値を超えていた.また,到達高や到達距離と身長との相関は0.8以上であった.これらのことから,ISO13857で規定されたいくつかの柵越到達距離は日本人にとって必ずしも妥当とは言えず,日本人に比較して体格の大きい欧米人にとっては妥当性は更に低くなると考えられた.