人間工学
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原著
主観的輪郭の記憶-再認特性に関する実験的検討
髙橋 雄三三澤 哲夫
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2012 年 48 巻 2 号 p. 70-78

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抄録
画面上に提示する情報を増やすためには,錯視現象を援用して画面表示を多重化する方法が有効である.本研究では錯視現象の一つである主観的輪郭を用いて情報を提示した際の記憶-再認特性について,項目再認課題を用いて実験的に検討した.主観的輪郭によって表現された図形の提示個数が増えるに従って,反応時間は延長し,正答率は低下した.また,主観的輪郭の誘導方法が不完全図形の場合,その傾向は顕著であり,図形の提示個数が2個を超えると,検出時間は他の条件に比較して有意に延長し,正答率は低下した.加えて,主観的輪郭が明るいと評価されると,主観的輪郭の正答率は低下する傾向が観察された.不完全図形の再認成績が低下した原因は,他の主観的輪郭を誘導する方法に比較して主観的輪郭の知覚に必要な「層化」の過程に要する時間の延長である可能性が示唆された.従って,主観的輪郭を用いてオブジェクトを提示する際,主観的輪郭と背景との間の主観的輝度コントラストを小さくする対策が必要であることが示唆された.
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© 2012 一般社団法人 日本人間工学会
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