2016 年 52 巻 4 号 p. 165-171
グリップを操作部とする機器や道具は数多く存在する.グリップ表面の微細な凹凸形状は,道具や機器の動作や全体の構造に影響を与えない.本研究では,従来から着目されている見栄え,心理的な印象,滑り止めに加え,身体負担低減,操作性や作業性能向上効果を得るための,グリップ表面の凹凸形状の深さや大きさ,形状の定量的な特徴の抽出を目的とする.グリップの表面形状の定量値と握り心地との関係を解析した.グリップ設計のための基礎的研究である.実験では,表面の凹凸形状を変化させた9種類のPLA(ポリ乳酸)樹脂素材の円筒を分析した.因子分析の結果,「硬軟感」「嗜好」「摩擦感」の3因子が抽出された.凹凸の深さが0.1 mm以下のものは,0.3 mm以上のものより,リラックス感や嗜好が高評価であった.9 mm辺の凸矩形より3 mm辺の凸矩形の方が滑りやすさが軽減されていた.