2021 年 57 巻 3 号 p. 111-118
バーチャルリアリティ(VR)を利用した時に発生する酔いを軽減する目的で,モーションベースという装置を用いて体全体を動かし前庭刺激を与える手法がしばしば用いられる.本研究では,VR酔いを誘発しやすい映像とされている回旋性視運動刺激を対象として,VR酔いに関連する不快な情動反応を軽減するモーションベースの制御方法について実験的な検討を行った.本実験では,20名の大学生を対象に,モーションベースの制御が異なる3条件下で同一の回旋性視運動刺激を観察させ,Self-Assessment Manikinを用いて感情尺度を測定し,さらに回旋性の眼球運動の様子を観察した.その結果,モーションベースを回旋性視運動刺激の回転方向,もしくはその逆方向に傾斜させることが不快感の抑制に効果的であることがわかった.さらに,不快感の抑制メカニズムが,モーションベースの制御方向により異なることが示唆された.