抄録
人間の筋骨格系は運動学的に冗長であり, 作業空間での運動を実現するのに必要な自由度に比べて, 一般に多くの自由度を備えている. 本論文ではクランク回転作業を取り上げ, 人間がどのような評価のもとで, この冗長自由度を利用し, 自らの姿勢を選択しているかについて解析する. このクランク回転作業は, 手先位置の制御だけでなく手先力の制御も必要で, 3種類の制御モード (力制御モード, 速度制御モード, 位置制御モード) を含んでいる. 実験の結果, 被験者は各モードごとに異なる評価のもとで上肢姿勢を選択していることが明らかになった. 上肢姿勢を決定するための評価は, 作業空間で要求される作業内容, 筋や骨格の力学的な構造に基づいて選択されている.