抄録
日常生活の遂行に支障を認めない19~80歳の女性35名を対象に, 住居内で身体的負担の強い移動動作を, 立ち上がり座り, 段の昇降, またぎ動作の3種類にモデル化し, 手摺利用の有無を含めた適正な移動寸法や手摺位置などについて検討した.
内観報告において, 後期高齢群が手摺なしでたいへん負担を感じ始める高さは, 立ち上がり座り, 段の昇降, またぎ動作の順におよそ座面高20cm以下, 蹴上げ高25cm以上, またぎ高30cm以上となった. 手摺の利用によりこの高さは変動し, 手摺の有効性が確認された. 水平面での手摺の最適位置は上前腸骨棘高付近に相当しており, 手摺の把持を前提とした最適手摺径は36mm前後であった. これらの結果は, 高齢者層の身体機能に応じた製品開発や, その普及の必要性を指摘しているとともに, 適切な生活環境の提供が高齢者層の日常生活の活性化や自立促進につながることを示唆している.