抄録
本論文は, 発声-受聴系における特性評価に関する新しい手法を, 相異度法の有用性を確認しつつ提案し, 単語了解度研究の基礎的な一技法を与えようとするものである. 本研究においては, 次のような手順に従って相異度法の有用性の検証を行った. (1) 発声や受聴の誤りが相異度法により解析できるか, (2) 発声や受聴の誤りを機械認識の場合と比較し, それぞれの相異や特質を記述できるか, (3) 発声や受聴における類似単語対を記述できるか, (4) 発声や受聴の誤りの個人差を記述できるか. 誤り発声は, 録音された発声のなかから拾い出され, ディクテーションにより得られた単語リストからは誤り書きされた単語が拾い出された. 上述の各項目はすべて相異度法により確認された. このようにして, 人の発声-受聴系の特性評価に相異度法が有効であることが確認された. この研究は多彩な了解度研究のほんの一断面をかいま見たものにすぎない. 今後, さらなる相異度法の研究の推進とともに, いっそうの学際的研究が望まれる.