抄録
暴力映像の視聴が, 受け手の暴力傾向を促進する方向に作用するという仮説は多くの研究者に支持されている. しかし, この作用は単純な関係ではなく, 視聴時における他者の受け取り方という付加情報が, 受け手による視聴内容の主観的評価を変更しうるという仮説もまた, 欧米においては積極的に指摘されつつあるといえる. 社会的・文化的背景により反応に差異が生じることが考えられるため, 日本での映像視聴時における付加情報の影響を調査した. 対象者は小学5年生と中学2年生の男子394名, 女子399名の計793名である. 教育的, 娯楽的, 無評価の3種類のコメントを加えた後, 暴力行為を描写した映像を放映してその感想を問うたところ, 普遍的な嗜好傾向および現実認識の変化に関しては差は認められなかったが, 残酷性の評価や模倣への欲求については, 娯楽的コメント群と他群の間に有意差がみられた.