人間工学
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大腿部に手をついて行う起立動作の解析
横地 義照藤本 浩志木塚 朝博横井 孝志
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2002 年 38 巻 1 号 p. 54-62

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抄録

下肢の筋力が衰えると (とりわけ高齢者では), 手を大腿部について起立動作を行うことが多い. その場合膝関節から上方では, 大腿部・体幹部・上肢が閉じたリンクを構成するため, 関節点の位置情報からだけでは股関節モーメントを逆問題として解けなくなる. そこで本研究では, 床反力と併せて, 手をつくことにより大腿部へ作用する力ベクトルを計測することで, 下肢関節モーメントの逆動力学解析を行うことを試みた. 実験は健康な成年男子10名を被験者として, 椅子の高さ2条件と, 大腿部に手をつくかつかないか2条件の組み合わせ4条件にて行い, 下肢関節モーメントの解析を行った. その結果, 起立動作中に大腿部に手をつくことで, 上体の前傾動作の制御が可能となり, 特に水平方向への移動の安定性が保たれ, 上体を前方移動するための下肢による協調作業が軽減された. さらに膝関節最大モーメントの減少により, 動作時の膝関節負担が低減されたことを確認した.

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© 一般社団法人 日本人間工学会
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