人間工学
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GUI画面上での脳性麻痺者のマウスポインタの移動と位置決め作業についての一考察
西口 宏美齋藤 むら子
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2007 年 43 巻 3 号 p. 124-131

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抄録

GUI仕様のOSの登場により, 痙性や不随意運動のために上肢を用いた高度な位置決め動作が困難な脳性麻痺者にとっても, マウスなどのポインティングデバイスを用いてアプリケーションソフトの起動やメニュー選択が可能となった. 本研究では, ショートカット・アイコンやメニュー・アイコンの大きさやポインタの移動距離, 移動の方向が脳性麻痺者のポインタ操作に要する時間値にどのような影響を与えるかについて検討した. 設定した8つの移動方向毎に, 移動距離3種類および目標点のサイズ4種類の, 合計3×4=12の作業条件を設定できる「ポインタ移動ならびに位置決め作業課題」を作成し, 脳性麻痺者6名と若年健常者9名 (対照群) を被験者として実施した.
その結果, 以下のことが把握できた. (1) 若年健常者群においては, フィッツの困難度指標 (ID) が増大すると作業時間値 (MT) も延長するが, ポインタの移動方向が異なってもMTに有意な差は見られない. (2) 障害等級2級の脳性麻痺被験者群では, IDとMTとの問には有意な相関が見られるが, 目標点のサイズに関係なく移動距離が短くなると健常若年者群に対する障害等級2級群のMT比が増加する. (3) 障害等級1級の脳性麻痺被験者の場合には, ほぼ全ての移動方向においてIDとMTとの間には相関が見られるものの, 移動方向により操作能力が異なる.

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© 一般社団法人 日本人間工学会
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