2014 年 21 巻 1 号 p. 79-87
本研究の目的は,透析患者に対する神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation: NMES)が身体機能や生活の質(quality of life: QOL),透析効率に及ぼす影響を予備的に検証することとした.症例1は,糖尿病性腎症により2009年から透析導入に至った59歳の男性で,症例2は,慢性糸球体腎炎により2012年から透析を開始した60歳男性であった.両症例とも,独歩は自立レベルであり,週3回,4時間/日の血液透析を実施していた.本研究は,各期間を8週としたAB型シングルケースデザインを採用した.基礎水準期には通常透析治療をおこない,操作介入期には透析治療中に大腿四頭筋と腓腹筋に対して電気刺激を計60分間実施した.体成分評価として体重,体水分量,下肢骨格筋量,身体機能評価として膝伸展筋力,6分間歩行,timed up and go test,maximum walking test,透析効率としてKt/V,urea reduction ratio,QOL評価としてKDQOL-SFを用い,各期前後に測定した.結果は,2症例ともに,操作介入期前後において下肢筋力,KDQOLの総得点,KDQOLの下位尺度である「睡眠」の改善が認められた.症例1は,下肢骨格筋量が電気刺激後に0.46 kg増加し,身体機能についてもすべての項目で改善が認められた.一方,症例2では膝伸展筋力が増加していたにも関わらず,下肢骨格筋量は0.45 kg減少していた.透析効率は両症例ともに明らかな改善はなかった.透析時間を利用したNMESは下肢骨格筋の筋力増強やQOL,睡眠障害を改善させることが示唆された.