2024 年 4 巻 1 号 p. 37-44
30歳男性。中学生の頃から食物が喉を通る時に快感を感じる・安心するという理由から食物の反芻を行うようになった。高校では陸上部に所属,長距離走選手として好成績を残すため,ダイエット目的に食事制限を開始すると,程なくしてむちゃ食い・嘔吐が始まった。摂食症を疑われ近医精神科を受診,体重は回復しむちゃ食い・嘔吐も消失したが,反芻は持続した。大学に入学すると,人間関係のストレスからむちゃ食い・嘔吐が再燃した。就職後は業務のストレスからむちゃ食い・嘔吐が増悪した。会社の健診で体重減少と白血球減少があり総合病院内科を受診,摂食症に伴う異常と評価され同病院の精神科に紹介されたが,摂食症に対する専門治療の必要性が高いと判断され,当科に紹介された。神経性やせ症 むちゃ食い・排出型と診断,著しい低体重に対し栄養療法を行ったところ,むちゃ食い・嘔吐は軽減したが,反芻は持続した。反芻に対する積極的な治療は行わず,食事場所の整備など社会的調整を推奨した。反芻症から神経性やせ症に移行した男性症例は稀であると考えられたため,文献的考察を加えて報告する。