教育心理学研究
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原著
面積比の理解に及ぼす操作結果の実体化の効果
進藤 聡彦麻柄 啓一
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2011 年 59 巻 3 号 p. 320-329

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抄録

 長方形を相似比でn倍すると面積もn倍になると誤って考える者が多いことが報告されている。このことは, 公式の変形を心内的に, i. 長方形の面積は縦と横をかけたものだ→ii. n倍すると縦も横もn倍になる→iii. ゆえに面積はn×n倍になる, と辿るプロセス(本研究ではこれを「操作」と名づけた)が不十分であることを意味している。本研究では正しい操作を促進する教授方略として「実体化」という概念を提案し, 操作結果の実体化を行う実験を大学生を対象に行った。実験1では, 操作結果を実体化して示す(長方形の顔写真を用いる)群と実体化しない群を設け, 公式の変形過程を教授した。その結果, 操作結果を実体化した群が事後テストで高成績を示した。これを踏まえ実験2と補足調査では, 効果的な実体化の条件をさらに検討した。その結果, 誤った操作結果(相似比でn倍にすると面積もn倍)を実体化した場合の図が現実の事物に照らして違和感を感じさせやすい場合に有効であることが示唆された。

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© 2011 日本教育心理学会
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