教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
原著
不適切な読解表象の形成における「想念の侵入」について
―説明的文章の読解を対象に―
舛田 弘子工藤 与志文
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 69 巻 3 号 p. 241-253

詳細
抄録

 工藤・舛田(2013),舛田・工藤(2013)は,説明文の不適切な読解が生じる原因の一つとして,文章内容から触発された想念が読解表象に入り込む現象,すなわち「想念の侵入」を指摘した。この現象は舛田(2018)による質的研究において確認されている。本研究では「想念の侵入」と不適切な読解表象との関係について量的な分析を行った。研究1では大学生96名を対象に,説明文の読解,文章中の「重要と思う部分」と「気になる部分」の抽出,文章の主旨の記述を行わせた。その結果,適切な主旨を記述した者は,重要と思う部分に依拠して記述する傾向があったが,不適切な主旨を記述した者では気になる部分への依拠が多く,「侵入」も多く観察された。このことから,文章中のエピソードの印象深さがその要因として指摘された。さらに,文章の冒頭と結びの部分に関連する「侵入」が多かったことから,文章構成の影響も考えられた。そこで,研究2では大学生94名を対象に,研究1の文章の結末部分を入れ替えた文章を用いて調査を実施した。その結果,入れ替えられた結末部分の内容に関する「侵入」の増減が確認された。以上の結果は,トップダウン処理による読解ストラテジーの誤用という観点から考察された。

著者関連情報
© 2021 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top