2021 年 69 巻 3 号 p. 317-328
本研究では,小学校の通常学級2学級を対象に,トゥートリング(援助報告行動)を促進するための相互依存型集団随伴性に基づく支援の効果を,学級間多層ベースラインデザインを用いて検証することを目的とした。対象者は,小学校5年の2学級の児童であり,各学級の児童数は29名であった。トゥートリング手続きは,学習内容に関する声かけを付箋紙に書いて担任に報告することであった。相互依存型集団随伴性に基づく支援は,グループ全員がこの付箋紙を提出した場合は,担任はグループ全員にシールを渡す,という手続きであった。また,低成績児童の漢字テスト成績への効果を付加的に検討した。その結果,2学級ともに他児からの援助を報告した児童の割合が増加し,相互依存型集団随伴性に基づく支援の導入によってトゥートリングが促進された。また,低成績児童の漢字テストの得点が改善することが示唆された。今後は,相互依存型集団随伴性に基づく支援によって生起する低成績児童と同じグループのメンバー間での援助行動の変容に関するさらなる検討が必要である。