教育心理学研究
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問題解決におけるリジディティーの因子分析的研究
村川 紀子
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1962 年 10 巻 3 号 p. 159-170,191

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抄録

リジディティーが人格特性に起因するか, 場の状況によつて現われるものであるか, 単一な因子か多様な現われ方をする因子であるかの問題については過去20年余にわたつて多数の研究がなされてきたが,その結果は一致せず明確な結論は得られていない。どのような観点からこの現象をとりあげるかが不一致の原因のひとつであると思われる。この混乱を整理する試みの第1段階として問題解決リジディティーをとりあげ, これが一般因子であるかいくつかに分けられる多面的な因子であるか, 分けられるとすればどのように分けられるのが妥当であるかを追求しようとした。またリジディティー因子と性格特性との関係を知ることによつてリジディティーの本質を明らかにしたいと考えた。
研究に先立つて信頼性のある妥当なテストを得ることが必要であつた。入手できるかぎりの内外関係文献を集めて, テストを詳細に検討した結果, 12のテストを選び数回の予備テストを経て8テストを採用した。被験者は中学1年生と大学2年生女子である。
8つのテストに知能テスト因子点, スピードの因子, 性格因子を加えて20項目について因子分析し, 4個の1次因子と, 2個の2次因子を得た。4個の1次因子のうち,(1) は知能の因子,(2) は速度の因子,(3) は実験的に導かれたセットからの変化に関するリジディティーの因子 (4) ははつきりと断言できないが, 経験的に導かれたセットからの変化に関するリジディティーの因子であると思われた。2次因子は (1) 精神的平衡を求める傾向に関する因子,(2) 知的エネルギーの因子と命名されうるように思われた。この分析では, あまりに多くの項目を用いすぎて結果がかえつて不明瞭になつたように思われたのでリジディティー・テストだけにつき因子分析を行なつた。その結果, 中学生を被験者とした場合には4因子が, 女子大学生の場合には6因子が抽出された。前者では (1) 自発的変化を要する場面におけるリジディティーの因子,(2) 強制的変化を要する場面におけるリジディティーの因子,(3) 数的能力の因子,(4) 空間的図式を巧みに利用する能力とそれぞれ命名された。後者では (1)(2) は中学生のそれとほとんど等しい負荷を示し,(3)(4) はいくらか異なるが, ほぼそれと思われる因子が見出された。
以上の分析から, わたしの用いたリジディティー・テストと知的能力との関係は大きいこと, リジディティー因子は単一のものでなく, いくつかに分けられることが認められた。
次に因子の本質を追求するために, 性格テストとの関係を考察した。質問紙形式, 作業形式等のいろいろのテストを用いて検討した結果, 中学生の場合も女子大学生の場合もほぼ等しい傾向が認められた。すなわち, 自発的変化を要する場面におけるリジディティー因子は, 劣等感, 回帰性気質, 客観性, 公正さ, 興奮傾向, 攻撃性情緒安定性, 自己防御性等に有意な関係を示したのである。
強制的変化を要する場面におけるリジディティー因子はどの項目とも有意な関係を示さなかつた。これに関してはすでにのべたようにテストの方法, 採点方法に改善すべき多くの点があつたと反省している。
リジディティーと性格特性との関係は, 知能のよい者とよくない者によつて多少異なることも認められた。
今後の問題としては, 第1にテスト方法, 採点方法を改善して, 分析を行ない, 強制的変化場面におけるリジディティー因子の性格を明らかにすること。第2にテスト場面にストレスを導入して個人の生得的anxiety傾向との相互関係を考慮しつつ, その変化を考察すること, 第3に, 厳密なサンプリングに基づいて, 発達的な変化を考察することなどが残されている。これらを順次研究し明らかにしていきたいと思つている。
(この研究について種々ご指導をいただきました倉石教授に深く感謝いたします。)

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