教育心理学研究
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子どもにおける保存概念の形成について
森 一夫
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1973 年 21 巻 1 号 p. 32-42

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抄録
Piagetのいわゆる具体的操作的思考期前の子どもを被験者に選んで実験したところ, 次のような知見を得た。
1. 5・6才児それに精神薄弱児に概念的葛藤を誘起し, それを止揚した命題が言語化できれば強化してやることによって, 物質保存概念を形成することができる。
2. 重量保存・体積保存の実例を呈示し, その観察命題が言語化できれば強化することによって, 5才児に両保存概念を形成することが可能である。これらの概念獲得は言うまでもなく, 可逆的思考操作によるものではなくて, 知覚に基づく総合判断によるものである。
3. 物質保存概念を欠如した5才児でも重量・体積の両保存概念を獲得できるばかりでなく, 両概念から逆に物質保存概念が形成される。これは, Piagetの強調する保存概念の獲得順次性が必ずしも固定されたものではないことを意味している。
4. 物質保存概念の成立根拠を説明し, 解釈する際にモデル化できるような現象の呈示によって, 5才児に粒子観の形成が可能である。これは自然認識において, 観察命題や経験一般則からいかにして理論命題が導出されるかという認識論上の1モデルを示唆するものである。
5. Piagetらは保存性の獲得に可逆的思考の成立を前提としているが, 本実験によれば, 知覚に基づく総合判断によって物質保存概念を獲得したならば, 逆にその命題に関してのみ可逆的思考操作が可能になる。
本報ではSmedslund (1961) らのように単に保存概念が補強によって促進されると主張するものではない。総合判断の意味的受容の発達構造はPiagetの言う論理的思考操作の発達構造のみに依存するとは必ずしも言えず, 後者が直接関与せずとも客観的実在の総合判断によって前者は成立し, また逆に, それから後者の形成があるという点で両者は二側面対立でありながら, 相互補償的に規定し合って認識が進むことを示した次第である。
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© 日本教育心理学会
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