教育心理学研究
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小学校児童における発話の停滞現象に関する研究
田中 敏
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1981 年 29 巻 4 号 p. 306-313

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抄録

本研究の目的は, 児童の発話において文節末尾に高頻度に出現するところの2つの停滞現象-「添音」と「強調」-の機能的分析にあった。次の仮説が検証された。仮説 (1): 添音は困難な発話を援助する機能をもつ。仮説 (2): 強調は添音の代替現象のひとつである。
実験Iでは, 小学1年生と小学4年生が対象とされ, 仮説 (1) を検証するため発話課題の困難度が変化させられ, また仮説 (2) を検証するため場面操作によって添音の発生頻度が変化させられた。その結果,(a) 発話課題の効果は得られず, 仮説 (1) は支持されなかったが,(b) 添音の発生が抑制された公式場面では強調が増加し, 逆に, 添音の発生が促進された親密場面では強調は減少して, しかも添音と強調を合わせた発生率は, この種の発話停滞現象への等価な効果が保証されている両場面間で有意差を示さなかった。したがって, 添音と強調の相補的分布が証明され, 仮説 (2) が支持された。
続く実験IIは, 仮説 (1) の再検証であり, 実験Iにおいて変化しなかったと思われる発話の困難度を, 相対的に軽減する手続がとられ, 結果として対応する添音発生率の低下を得た。しかしながら, その手続と結果に仮説 (1) 以外の解釈の可能性が混入したため, 結論を保留し, 統制実験IIIに訴えた。この結果, 他の解釈は退けられ, 仮説 (1) を採択するに至った。
最後に, 支持された仮説に基づいて, 就学期児童の言語発達の一様相が指摘され, 今後の研究の展望が示された。

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© 日本教育心理学会
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