教育心理学研究
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再解釈と計画が気晴らしへの依存に及ぼす影響
ストレス状況の文脈を考慮して
及川 恵
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2003 年 51 巻 3 号 p. 319-327

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抄録

気晴らし (distraction) は, 代表的な情動調節方略とされ, 日常生活において広く活用される一方, 適応的な調節が困難となり, 非効果的な気晴らしが持続する状態, すなわち気晴らしへの依存ともいうべき不適応的側面に繋がる可能性も指摘される。本研究では, 同一のストレス状況でも複数の方略が用いられる点に着目し, 気晴らしへの依存を低減する認知的対処方略として再解釈と計画を取り上げ, 気晴らしへの依存に及ぼす影響について検討することを目的とした。ストレス状況は, これからやるべきことで憂うつな状況 (遂行状況) と, すでに終わってしまったことで憂うつな状況 (既済状況) とした。各方略と気晴らしへの依存との関連に, 気晴らしの実行度が影響するかどうかを検討するため, 交互作用項も投入して重回帰分析を行った。重回帰分析の結果, 計画は各々の状況で気晴らしの実行度の影響にかかわらず, 気晴らしへの依存を低減し, また, 再解釈はストレス状況により気晴らしへの依存に及ぼす影響に差異があり, 特に遂行状況における有効性が示唆された。以上の結果から, 計画と再解釈が気晴らしへの依存を低減するために有効な方略であることが示唆された。

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© 日本教育心理学会
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