教育心理学研究
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いかにスタッフらは〈問題を抱える子どもについて語る〉という活動にアクセスするのか
談話実践としての療育カンファレンスに関する検討
藤本 愉
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2005 年 53 巻 1 号 p. 37-48

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抄録

本研究では, 療育カンファレンスにおいて, いかに療育スタッフらは〈子どもが抱える問題について語る〉という活動へとアクセスしているのか, 主に正統的周辺参加論 (Lave & Wenger, 1991) における「透明性」概念に基づいて談話分析を行った。その結果, 子どもが抱える問題を特定の「心理学的言語」 (Mehan, 1993) によって記述することは, スタッフ間の概念の共有化を円滑にする反面, 子どもが抱える問題への多元的なアクセスを制限してしまう可能性があることが示唆された。そして, 〈子どもが抱える問題について語る〉という活動へのアクセスにおいて, 問題についての語り方が異なる場合, スタッフ問にコンフリクトが生じていた。また, 療育カンファレンスにおいて, スタッフによる主観的印象と, 心理検査によってもたらされた客観的結果との間のズレという形で, コンフリクトが生じたことが明らかになった。以上の分析から, 談話理論としての正統的周辺参加論の可能性と限界点が示された。

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© 日本教育心理学会
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