教育心理学研究
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抑制スタイルが抑制の逆説的効果の生起に及ぼす影響
木村 晴
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2005 年 53 巻 2 号 p. 230-240

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抄録

ある思考を抑制するとかえって関連する思考が増幅する抑制の逆説的効果が報告されている。この効果は, 抑制の意図が高いほど生じやすいとされていることから, 本研究では, 個人が持つ抑制スタイルが抑制の成否に及ぼす影響を検討した。思考を徹底的に頭から締め出そうとする積極的抑制スタイルを持つ者は, 抑制意図を高め, かえって抑制の逆説的効果を経験するが, 侵入思考を受け流そうとする受動的抑制スタイルを持つ者は, 相対的に逆説的効果が生じないと予測された。実験1では, 参加者は受動的もしくは積極的な抑制スタイルを誘導され, 中性刺激の抑制を行った。また, 実験2では, 事前に行われた質問紙によって, 積極的抑制スタイル群, 受動的抑制スタイル群に分けられ, 個人的な日常の悩みを対象として抑制を行った。両実験において, 積極的抑制スタイルを持つ者は, かえって逆説的効果を生じさせたのに対し, 受動的な抑制スタイルを持つ者は, 逆説的効果を生じさせず, 予測どおりの抑制スタイルの影響が示された。また, 抑制スタイルにかかわらず, 抑制時に代替思考を用いた方略使用抑制群では, 逆説的効果が生じなかった。抑制対象, 抑制方略, そしてメタ評価が抑制の成否に及ぼす影響を論じる。

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© 日本教育心理学会
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