てんかん研究
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後頭部に連続性の棘 (鋭) 徐波複合および棘 (鋭) 波が15年間持続して出現したてんかん患者について
17年間の経過観察
上杉 秀二小島 卓也市川 忠彦大高 忠
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1986 年 4 巻 2 号 p. 149-157

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抄録

12歳初発のてんかん患者で, 27歳までの15年間の脳波 (20数回の記録) に, 棘 (鋭) 徐波複合ないし棘 (鋭) 波が後頭部に連続性に出現し, 前頭部優位にδ波が群発する稀な症例を報告する。症例は29歳の女性で既婚。満期で正常分娩。高熱疾患, 遺伝負因はなく, 生後10ヵ月時に熱性けいれんを1回認めた。神経学的異常所見, 視覚障害, 知能障害を認めない。CT-scan異常なし。発作は急に気持ちが悪くなってうずくまり, 強直間代発作を示すもので, 発作回数は, てんかん性放電が持続して出現している割りに合計8回と少ない。
てんかん性放電は開眼で抑制されたが, 抗てんかん剤では消失しない。終夜睡眠脳波ではREM睡眠を認めたが, NREM睡眠では明らかな瘤波, 紡錘波が見られずしばしばδ波が群発し, その段階分けは困難だった。てんかん性放電はREM睡眠で覚醒時より減少し, NREM睡眠で著減した。27歳以降はてんかん性放電の頻度が減少した。本例の病巣部位については, 後頭葉の皮質ではなく, より深部が考えられた。

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