抄録
本研究では市町村合併を経験した保健師集団を対象に,環境変化とともにその活動システムが変化する過程を追跡することを目的とした。研究方法はインタビュー調査を用い,活動理論を参考に分析を行った。その結果,次の3点が明らかになった。1)合併前は,地域に出向き住民に出会う活動を展開してきた「周辺市町村活動システム」と法で課せられた活動を展開してきた「中心市活動システム」に分類できた。2)合併調整では,全市統一した活動を行う方針となったが,これが既存システムとの間でダブルバインドになった。3)合併後の「合併混乱期活動システム」は,ダブルバインドの突破をめざし「住民」を対象とした活動を模索する中で,保健師の専門能力として求められている「地域診断とそれに基づくビジョンの策定」を改めて意識することになった。以上より,この環境変化は,組織や人口規模に柔軟に対応できる,保健師の専門能力を意識した活動システム創出のための拡張的学習のプロセスだったと言える。