実験社会心理学研究
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援助行動が自己呈示とみられるとき:観察者の有無と性別が動機推測に及ぼす影響
山本 佳祐池上 知子
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2021 年 61 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

山本・池上(2019)は,第三者が自己呈示に関する素朴理論に基づいて援助者の動機を推測しているという仮説を提起し,援助場面における観察者の存在が動機推測に影響することを見出した。本研究は,彼らの結果の再現性を確認することを第1の目的とし,さらに観察者の性別が動機推測に及ぼす効果を明らかにすることで,上記仮説を支持するより強力な証拠を提示することを第2の目的とした。大学生277名を対象に援助場面のシナリオを用いた質問紙実験を行った。山本・池上(2019)と同様に,観察者がいない状況よりも,いる状況の方が,援助者に自己呈示動機が推測されやすいことが示され,観察者の存在が動機推測に及ぼす効果の頑健性が示された。より重要なことに,援助者と同性の観察者がいる状況よりも,異性の観察者がいる状況の方が,援助者に自己呈示動機が推測されやすかった。ただ,単なる異性の観察者がいる状況と,援助者が意中に思う異性の観察者がいる状況の間では,動機推測に差がみられなかった。しかし,観察者の存在および観察者の性別が動機推測に及ぼす影響は,2種類の援助場面間で一貫してみられ,効果の頑健性が確認された。よって,上記仮説を支持するより強い証拠が示された。

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© 2021 日本グループ・ダイナミックス学会
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