論文ID: 2205
本研究は,愛知県半田市の外国籍市民への支援と当事者の支援団体との恊働的実践についてなされたものである。外国籍市民に対する支援は,当事者側のニーズが次第に明らかになることで,支援者側がそのニーズに即した適切な支援を行うことがますます求められてきている。一方で,外国籍市民との恊働的実践において,支援者が当事者とともにニーズを確認しそれに合わせた支援を行っていても,あとから見出された本来の支援内容とは異なるもう一つのニーズが出現してくることがある。本研究では,当事者と支援者がともに確認した「当初の支援ニーズ」と,かかわりから見出された「もう一つの支援ニーズ」が互いに異質なまま混在している状態が,当事者と支援者の関係性が問われる場面だととらえ,これらの異なるニーズが混在する場をどのように活用すべきか考察することを目的とした。恊働的実践を展開していく中で,「当初の支援ニーズ」と,「もう一つの支援ニーズ」が出会うことで生成される互いの差異,すなわち「ずれ」は,必ずしも解消すべきものではなく,むしろ当事者と支援者を結びつけるきっかけに繋がることが示された。