抄録
本研究は, Cohen, A.R. (1962) による“相互影響的な事態に於けるネガティブな態度変容 (boomerang effect) の惹起に及ぼす不協和の大きさの影響”についての実験的知見に再検討を加えるべく, 先の実験に若干の変更を加えたものの大略はこれに準じたかたちで行なわれた。
被験者は男子大学生32名で, “大学生活に於けるサークル活動の意義”という問題について各々立場を異にする者同志を二人一組としたbefore-afterデザインの実験である。相互影響的な事態に於いて, 立場を異にする相手を説得せんとした場合には, 自分の意図に反して相手からネガティブな反応がフィードバックされてくると, その度合が強い程 (high-dissonance条件), コミュニケーターの経験する不協和は大となり, その度合が弱い場合 (low-dissonance条件) よりもブーメラン効果は大となった。Cohen (1962) の対面的な実験場面で生じたbargaining effectを排除する為に本実験ではブースを使用したが, これにより実験結果は, 不協和理論の立場からより一義的に解釈され得るであろう。