実験社会心理学研究
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二者間コミュニケーションにおける不安性の効果
とくに, 高・低両極の不安水準の機能について
大坊 郁夫杉山 善朗吉村 知子
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1975 年 15 巻 1 号 p. 1-11

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抄録
本研究では, 不安水準に関して極端な高 (H), 低 (L) 不安水準を有する女子学生を被験者とし, 非対面状況での二者間の言語的コミュニケーション過程を検討した.
二者の対構成は, H-H, L-L, H-Lで, それぞれ6組み構成し, 2日間の間隔で4セッションを繰り返した. 用いた指標は, 同時沈黙 (CS), 同時発言 (CT), 単独発言 (OT), CS後のOT, 交代同時沈黙, 中断同時沈黙, 積極的同時発言, 受動的同時発言であった.
得られた主な結果は次の通りである.
1. 全群ともセッション1から2以降にかけて, 対全体としての活動性が増大する傾向がみられた. また, とくにCTについては, H-L>H-H>L-Lのように不安群間に差が得られた.
2. 個体間の比較では, 単独発言強度, CS-OT強度の大きさ, H (L) の合づち発言の多さ, L (H) 発言からH (L) 発言へ交代するときの潜時の長さなどからL (H) の高い活動性が示され, 概してL (H) >H (H) L (L) >H (L) という関係がみられた.
3. 面識の有無のもたらす効果をみると, おおむね, 言語活動性は, 非面識>面識条件という関係を示した. 発言優位性は, H-Hは非面識条件で, L-Lは面識条件でより交代を呈し, H-Lでは一定しない.
4. 本実験で用いた3群はいずれも, M中心の対構成群に比較して, より全体の活動性は高く, 交渉の最終期であるセッション4についてみると, H-H>H-L>L-L>L-M>M-M>H-Mという関係が示され, 個体の言語活動性は, 相手の不安水準と関連することが明らかにされた.
以上の結果について, 不安動因仮説, 類似性一牽引性仮説および二者間不安水準の異同と言語活動性の曲線的関係の観点から考察した.
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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