実験社会心理学研究
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職務満足度と職務重要度の相互作用に関する実証的研究
古川 久敬
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1975 年 15 巻 1 号 p. 25-34

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抄録

組織体従業員の行動を理解するとき, 彼らが職務要因のいかなる側面にどの程度満足しているか (職務満足度) だけでなく, それらの職務要因をどの程度重要と認知しているか (職務重要度) を知ることは有用なことである.
これまで, 職務満足度と職務重要度との関係について, 多くの研究が行なわれてきたが, それらは相互に一貫した結果を得ていない. 本論文では, それらの研究をレビューし, 過去における研究で一貫した結果が得られなかったひとつの理由として, 二つの操作的問題 (重要度測度の不完全さ, および外部基準変数の設定) を指摘した. さらに, 保線作業に従事する従業員297名を対象に, 次の二つのことを実証的に分析, 吟味した.
ひとつは, 職務重要度で満足度を重みづけすることによって, 重みづけしないときよりも, 外部基準 (転退職見込み, 組織体の将来についての認知, 精神衛生, 仕事の達成感) との相関が向上するか否かの分析であった. 本研究の結果は, 重要度による重みづけが, 満足度と各外部基準との積率相関, 重相関をわずかではあるが向上させ, かつ, 偏相関を用いて明らかにされたように, 各外部基準におよぼす満足度の効果をいくぶん鮮明にすることを示唆していた.
他のひとつは, 外部基準におよぼす職務要因の満足一不満足の影響力は, その職務要因がある個人にとって重要と認知されているときにより大きいであろうとするLocke (1969) の仮説を検証することであった. 結果は, これを支持するものであった. すなわち, 満足度と重要度とが従業員の転退職見込みにおよぼす相互作用効果を分散分析を用いて吟味したところ, 職務要因 (収入, 職場の雰囲気) を重要とし, かつそれに満足している従業員とくらべて, 重要としているが, それに満足していない従業員において, 転退職見込みはより高いことが明らかにされた.
これらの結果は, 外部基準におよぼす満足度の効果が, 重要度により増幅, 明瞭化されることを示すものである. したがって, 外部基準の予測は, 職務満足度だけでなく, 職務重要度を同時に考慮することによって, その予測精度を向上させうることを示すものとして解釈, 考察された.
最後に, 今後の研究において, より妥当性の高い重要度測度, および最適の重みづけ方法を開発する必要のあることが議論された.

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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