実験社会心理学研究
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対人関係における 「甘え」 についての実証的研究
藤原 武弘黒川 正流
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1981 年 21 巻 1 号 p. 53-62

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抄録

本研究は, 土居健郎によって精神分析的見地から提唱された甘えの計量化をめざしたものである. 研究Iにおいては, 甘えを測定するための一次元尺度構成に関する基礎的資料を得ること, ならびに日本人の対人関係の基本次元を明らかにすることが目的である. 35名の大学生 (男子16名, 女子19名) は, 97の動詞を類似しているものは同一のグループに分類することが求められた. その類似性行列は林の数量化第IV類によって解析が行われた. そして次の8つの群が見出された. 1. 拒絶・無視, 2, 好意・一体感, 3. 優越感, 4. 保護, 5. 相手の気嫌をとること, 6. 甘えられないことによる被害者意識, 7. 負い目, 8. 甘え.
研究IIの目的は, いかなる対象に対して, どのような状況のもとで甘えが最も表出されるのかを明らかにすることにある. 286人の大学生 (男子112人, 女子174人) は, 11の困った状況のもとで, 12の対象人物に対する感情を10の甘え尺度で評定することが求められた.
主要な結果は次のとおりである.
1. 両親よりもむしろ恋人や親友に対する甘えの方がより強くみられた.
2. 男性よりも女性の方により多くの甘えがみられた.
3. 家庭問題に関する状況では, 両親や兄弟姉妹に対して甘えを最も示し, 個人生活の問題に関するその他の状況では, 恋人や親友に対して甘えを強く表出した.
こうした結果は, 甘えとそれに関連する問題についての理論的含みから議論が行われた.

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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