抄録
本研究は, 客体的自覚と自己評価の関係について, 以下の2つの仮説を立て, 検証することを目的とした。この場合の自己評価は, 理想的自己と現実的自己の差を指している。
仮説I自己意識が高い人は, 低い人に比べて, 理想的自己と現実的自己の差 (D得点) が大きい。
仮説II客体的自覚の状態にある人は, 理想的自己と現実的自己の差が大きくなる。
仮説Iに関しては, Fenigstein, et al (1975) による自己意識尺度と, Martire (1956) によるI-Rテスト (Ideal-Real Self Discrepancy Test) における理想的自己と現実的自己の差尺度を用い, 自己意識の高低とD得点の差の大小を比較した (調査対象者607名, 全員男子大学生)。その結果, 自己意識の高い人と低い人の間で, D得点に有意差は見出せなかった。しかし, 自己に関する2項目のD得点の合計と自己意識の間には有意な相関が認められた。
仮説IIに関しては, 被験者を客体的自覚の状態に導く手段として, 鏡とビデオ (実験1, 被験者は男子大学生20名) と自分の声を聞かせる (実験2, 被験者は男子大学生20名) を用いた。実験2において, D得点が有意に上昇するという結果が示された。