実験社会心理学研究
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意見の対立事態における発話の基礎的研究
濱 保久篠塚 寛美戸田 正直
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1988 年 28 巻 1 号 p. 55-64

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抄録

本研究の目的は, (1) 対人交渉場面における発話動機 (説得動機および配慮動機) と発話パターンの関連を明らかにすることと, (2) 対話における相互作用過程を, 発話者の発話戦略 (攻撃型か防衛型) が返答者の戦略選択におよぼす効果という観点から明らかにすることである。
交渉場面には, 2人の友人が一緒に旅行するための交通手段 (JRか飛行機) を話し合いで決めるという場面を設定した。一方の交渉者の発話を実験者が提示し, それに対する返答を被験者に記述させ, 同時に2種の発話動機の強さを7段階で評定させた。実験者が提示する発話には, 攻撃的戦略のものと防衛的戦略のものの2種類を準備し, 被験者を半数ずつ配した。
被験者の返答のコーディングは, 以下の5項目に従って行なった。(1) 説明的発話の有無, (2) 相手発話フォローの有無, (3) 発話戦略 (攻撃, 防衛), (4) 個人的事情の発露の有無, (5) 価値転換戦略の有無
分析の結果, 説得動機は個人的事情の発露の回避と説明的発話に関係しており, また一方, 配慮動機は相手発話のフォローと発話戦略とに関係していることが確認された。また, 攻撃的発話は防衛的発話によって返答される傾向が認められたが, 本研究で用いた発話内容を考慮し「弱い攻撃的発話は, 防衛的返答を誘発する傾向がある。」という仮説を導出した。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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