実験社会心理学研究
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他者共在が不安反応に及ぼす効果
SOCIAL ANXIETYについての実験的研究 (1)
横山 博司坂田 桐子黒川 正流生和 秀敏
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1992 年 32 巻 1 号 p. 34-44

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抄録

本研究の目的は, 「自分が他者に注意を向け, 他者を自分の客体として意識している時には, 他者共在は不安を減少させる。逆に, 他者が自分に注意を向け, 自分を他者の客体として意識している時には, 他者共在は不安を増大させる」という仮説を実験的に検証することである。被験者は女子大学生110名である。不安喚起刺激には「ホラー・ビデオ」と「ポルノ・ビデオ」を用いた。被験者は「ホラー・ビデオ」あるいは「ポルノ・ビデオ」が呈示される条件のもとで, 次の立場の異なる4条件の中のいずれか一つの条件で実験を受けた。実験条件は不安喚起刺激に曝されている自分の表情がモニターテレビを通して他者に観察される「被観察条件」と, それをモニターテレビを通して観察することができる「観察条件」, および衝立で仕切られた部屋で2人の被験者がビデオを見る「共在条件」及び一人でビデオを見る「一人条件」である。不安の測度としては, 生理指標として心拍率と, 主観的指標としている簡易版AACLを用いた。
本実験の結果, 以下の3点のことがわかった。1) 他者の不安反応に及ぼす影響は, 単に他者が共在していることではなく, 他者との共在様式に規定される両者の立場の相違によって影響される。2) 他者共在は, 自分が他者を「観察できる」という能動的立場にある場合には不安を低減させる効果を持つが, 「観察される」という受動的立場にある場合には逆に不安を高める。3) 脅威刺激や脅威事態の性質の違いによって引き起こされる主情動が異なり, その質的な違いが「観察される」状況下での不安反応の程度に影響を及ぼしている。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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