抄録
本研究の目的は, (1) シミュレーション・ゲームを用いる実験によって, 同額を徴収された場合に, 直接税, 外税, 内税のいずれが最も負担感のあるもの「であるのか」を示すと同時に, (2) 社会調査によって, ちまたではいずれが負担感のあるもの「と思われているか」を調べ, (3) 実験による「実際の」負担感と調査による「考えられている」負担感とを比較することである。実験では, 25名の大学生の被験者は, 収入を得, 消費をし, 税金を払う経済場面を模擬したゲームに参加した。被験者は, 3つの条件 (直接税条件, 外税条件, 内税条件) のいずれかにランダムに分けられた。結果は, 外税条件, 直接税条件, 内税条件の前者の被験者ほど, 最も負担感を感じていた。一方, 調査では, 210名の成人の被験者に, 同額を徴収されたときに, 各々の税金のいずれが負担感の強いものと考えているかを質問した。70%の被験者が, 直接税は, 外税, 内税のいずれよりも負担感があると感じ, 40%の被験者が, 外税と内税の負担感には差がないと考えていた。実験と調査の負担感の差異が大きかったことから, これまで実証的な検討の乏しいままに論議されてきた消費税の問題に関し, 客観的事実を提供する実験的研究の重要性が主張された。他に, 価値関数の概形は, 税金の負担感を予測しないことが示された。