実験社会心理学研究
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自己開示行動に対する認知と対人魅力に関する研究
親密な関係と親密でない関係の比較
高木 浩人
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1992 年 32 巻 1 号 p. 60-70

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抄録
本研究では, 親密さの程度の異なる関係間で, 自己開示が対人認知に与える影響を比較検討するために, 開示内容の望ましさを3水準, 開示者-被開示者の親密さの程度を2水準に操作した実験を行った。従属変数は, 印象評定より抽出された対人魅力, 能力, 活動性及び, 対人魅力を媒介する形で大きな影響を持つと考えられる, 知覚された個人志向性, 知覚された取り入りの動機, 知覚された真正性, 知覚された迷惑さの4つの認知的変数であった。
分散分析の結果, 対人魅力において交互作用は認められなかった。しかし, 知覚された個人志向性に交互作用の傾向が認められたことより, 関係の親密さの程度によって, 自己開示の内容の望ましさが知覚される個人志向性に与える影響の異なることが示唆された。
各変数間の偏相関を求めて, 親密さの程度のHigh-Lowで比較した。その結果, 親密さの程度によらず, 個人志向的な開示を行うことは, 同時に取り入りの動機を高く知覚される危険性をはらんだ行為であるということが示唆された。また, 親密さの程度が高い関係に特徴的であったのは, 個人志向性と真正性との間の正の関係であった。これは, 親密な関係がお互いの信頼関係によって成り立っていることを反映しているものと解釈した。
4変数と対人魅力との偏相関を求め, 関係の親密さのHigh-Lowで比較した。両条件に共通であったのは, 迷惑さとの負の相関関係であり, High条件では真正性との, Low条件では個人志向性との正の相関関係がそれぞれ認められた。したがって, 対人魅力について考える場合, 個人志向性は, 比較的親密さの程度の低い人間関係において重要な変数であることが示唆された。
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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