実験社会心理学研究
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英語教科書の内容分析による日本人の性差別意識の測定
崎田 智子
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1996 年 36 巻 1 号 p. 103-113

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抄録

本研究は, 日本社会及び日本人の意識の中に深く組み込まれ, 潜在化した性差別を測定する目的で, 日本で使用されている外国語教科書-英語教科書-に焦点を当て, その編集面やその中で使用されている表現等に現れた性差別を検証した。測定の前提として, 外国語教育においては, 学習内容の理解及び言語習得を阻害しないように, 学習者にとって最も典型的で負担の少ない文脈設定を行うため, 学習者の文化的ステレオタイプをも含んだ形での教材化がなされる, という点に注目した。調査項目は (1) 物語文中の男女比 (2) 練習問題・モデル文中の男女比 (3) 動物の性 (4) 職業・肩書き (5) 挿し絵の性 (6) 形容詞 (7) 行動・話題 (8) その他の性差 (9) 教材の初出年度, の9項目である。調査の結果, 英語教材に存在する性差別が明らかにされた。男女の登場度合いの差, 職業の限定, 動物の描き方等により, 男女の可視度に大きな差がある事が, 又, 形容詞の分類及び行動と話題の吟味により, 男女がステレオタイプによる枠にはめられて描かれている事がわかった。これらの性差は, 物語文, 練習問題, モデル文, 挿絵, 写真, と, 教科書全般にわたって顕著に認められた。これらは, 日本社会に潜在する性差別を反映したものであることが示唆された。

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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