森林立地
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大雪山における1954年台風被害地の土壌変化モニタリング
眞田 悦子塩崎 正雄高橋 正通
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1996 年 38 巻 1 号 p. 20-27

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抄録

1954年の台風による風倒で,ほぼ完全に林冠が破壊された北海道大雪山の針葉樹天然林の土壌変化を,風倒前から継続してモニタリングした。調査地は風倒前に植生と土壌の帯状調査区を設置した所で,風倒前後の,堆積腐植型,表層土壌のpH,炭素濃度および交換性Caについて調査,分析した。風倒前に堆積腐植がモル型やモダー型であった土壌は,風倒後6年以内にムル型に変わりその状態が続いたが,26年目あたりから変化し,34年目以降モダー型になった土壌もあった。風倒前にムル型であった土壌は,風倒後も現在に至るまでムル型のままであった。土壌の化学性の変化は,風倒前の堆積腐植型の違いにより変化の傾向や程度が異なった。モダー型やモル型のような腐植の厚い土壌では,風倒後A層のpHは上昇し,炭素と交換性Ca濃度も上昇し,風倒後14〜22年目あたりから低下する傾向がみられた。ムル型土壌では,風倒直後にモダー型やモル型と反対に炭素や交換性Ca濃度が低下したが,その後は変化の程度が小さく,一定の傾向を示さなかった。これらの変化は,風倒後の堆積腐植の分解と再堆積に起因すると推察した。風倒前の土壌の化学性に戻るにはさらに年月の経過が必要であると予想した.

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© 1996 森林立地学会
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