1996 年 38 巻 1 号 p. 35-42
中国東北部,黒竜江省寧安県の小北湖林場のチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林に9方形区を設定し,樹高2m以上の個体について毎木調査を行った。チョウセンゴヨウは山地斜面の優占種であると同時に,谷部の湿性の立地に優占するマンシュウカラマツやハルニレとも混交し,立地の乾湿条件に対して広い分布範囲を示した。山地斜面の適潤立地のチョウセンゴヨウ-落葉広葉樹混交林は2〜3層の階層をもち,高木層ではチョウセンゴヨウ,亜高木層あるいは低木層ではアムールシナノキとトウシラベ,低木層ではカエデ類が優占していた。チョウセンゴヨウは,チョウセンゴヨウ優占林の低木ないし亜高木層に少数ながら出現するが,ギャップが認められる林分には樹高2m以下の稚樹が多数定着しているのが観察された。また,山火事跡地のチリメンドロ・コウアンシラカンバ林の下層にチョウセンゴヨウが多数分布すること,およびチョウセンゴヨウ優占林の林冠を構成するチョウセンゴヨウがほぼ同齢であることから,この種は比較的小さな林冠の疎開,あるいは火災のような林冠の大規模な破壊の後に更新し,最終的に優占種となることが推定された。