森林立地
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兵庫県南部地震による臨海埋立地の緑地における地盤液状化被害 : 神戸市ポートアイランド南公園の被害調査
荒木 誠金子 真司清野 嘉之池田 武文古澤 仁美鳥居 厚志伊東 宏樹高畑 義啓玉井 幸治
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1997 年 39 巻 1 号 p. 46-58

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抄録

1995年1月17日未明,阪神・淡路地域を襲った兵庫県南部地震は,神戸市ポートアイランドなど臨海埋立地において地盤液状化を引き起こし,地下水と埋立砂を多量に噴出させた。噴出して堆積した砂(以下「堆砂」という)には高濃度の塩分が含まれているので,緑地の樹木を衰退・枯死させることが懸念される。そこで,ポートアイランド南公園の緑地における堆砂とその直下の土壌を調査・分析するとともに,代表的な6樹種(アキニレ,ヤマモモ,ウバメガシ,ヤブツバキ,マルバシャリンバイ,ハマヒサカキ)の生育状況の調査を行った。その結果,次のことが明らかになった。1)地震後2ヶ月経過した3月14日において,堆砂のEC値は約0.7mS・cm^<-1>,表土の値は約0.3mS・cm^<-1>であった。しかし,平年の2倍以上もの降水(348mm)のあった5月には,堆砂,表土とも0.2mS・cm^<-1>未満となり,塩分濃度の面で植物の生育上問題のない値となった。2)堆砂が厚く堆積しているところでは,降水が堆砂中に保持され,埋没した元の表土への水分供給が阻害された。3)堆砂した樹林地では,ヤマモモ以外の5樹種の当年葉の葉面積が小さい傾向が見られた。4)3月14日〜10月17日における調査対象樹木の枝葉の全炭素濃度,全窒素濃度には,特別な変化は認められなかった5)堆砂に覆われたところでは,林床植物の種数が半減し,開花した種数も少なかった。6)8月の樹木の水ポテンシャルは,-2.0MPa〜-4.5MPa近い値であり,極めて厳しい水ストレスを受けていることが示された。特に,マルバシャリンバイ,ウバメガシ,ヤマモモでは,堆砂に覆われたところの方が,堆砂のなかったところよりも強い水ストレスを受けていた。7)地盤液状化の発生が樹木の休眠期間であったこと,例年に比べ5月に降水量が多く堆砂および埋没表土中の塩分が比較的早期に希釈され流亡したことによって,多くの樹木が激しい衰退や枯死に至らなかった。

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© 1997 森林立地学会
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