森林立地
Online ISSN : 2189-6275
Print ISSN : 0388-8673
ISSN-L : 0388-8673
沖縄の0次谷における土壌侵食と土壌の物理特性との関係
大貫 靖浩生沢 均寺園 隆一
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 40 巻 1 号 p. 17-25

詳細
抄録

沖縄本島においては,島をとりまく珊瑚礁が陸地の開発による「赤土」の流入によって被害を被っている。沖縄の丘陵地における森林伐採後の土壌侵食の発生条件を明らかにするために,筆者らは丘陵地内の0次流域内の微地形単位と,分布する土壌の個々の物理特性について検討した。微地形単位は6つのユニットに分類され,4つの土壌群が分布する。1)頂部平坦面(赤色土・表層グライ系赤黄色土),2)頂部斜面(黄色土・表層グライ系赤黄色土),3)上部谷壁斜面(黄色土・表層グライ系赤黄色土),4)谷頭凹地(黄色土),5)下部谷壁斜面(未熟土(受食土))そして6)谷底面(未熟土)。各土壌型の粘土比・分散率・孔隙率及び飽和透水係数を検討した結果,斜面の上の方に位置する赤色土と表層グライ系赤黄色土は侵食されやすいのに対して,斜面の下の方に位置する黄色土は侵食されにくいことが明らかになった。この結果は,森林伐採後の頂部斜面と上部谷壁斜面における,表層グライ系赤黄色土のA層の層厚の減少と良い対応関係を示した。それゆえ,表層グライ系赤黄色土の分布域は,森林伐採後特に侵食される危険性があると考えられた。一方,赤色土は受食性は高いが,分布域の傾斜が非常に緩いため森林伐採後の侵食量は極めて少ないものと推察された。

著者関連情報
© 1998 森林立地学会
前の記事 次の記事
feedback
Top