森林立地
Online ISSN : 2189-6275
Print ISSN : 0388-8673
ISSN-L : 0388-8673
落葉広葉樹林の上層と下層での葉フェノロジー : 1997年の荘川村六厩における解析
加藤 正吾山本 美香小見山 章
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 41 巻 1 号 p. 39-44

詳細
抄録
落葉広葉樹林において上層から下層までの樹木の葉フェノロジーを調査した。調査地は,春先の3月下旬から4月上旬に林床の雪が完全に消えており,多雪地帯のように残雪が展葉を妨げる阻害要因とはなっていなかった。最も早く展葉したのは下層木のツリバナ,チョウジザクラであった。上層木で最も早く展葉したのはシラカンバ,ウワミズザクラで,最も遅く展葉したのはクリであった。上層木の展葉時期の差は一ヶ月程度であった。上層木は5月下旬以降に展葉する樹種が多かったが,ハイイヌガヤとリョウブ以外の下層木12種は,この時点ですでに展葉を開始していた。高木性樹種において,dbhの小さな個体の中に他の個体よりいち早く展葉する個体がみられた。以上より,下層に成立している個体の多くは上層の林冠が閉鎖する前に葉を展開し,上層と下層の葉フェノロジー差によって早春に好適な光環境を得ていることが示された。
著者関連情報
© 1999 森林立地学会
前の記事 次の記事
feedback
Top