2002 年 44 巻 1 号 p. 21-29
近年,地球温暖化対策としての大規模な乾燥地植林が注目されているが未だ実施例は存在していない。そこで現在,年降水量200mmの西オーストラリア州レオノラ地区において乾燥地植林の方法論の確立とその炭素固定効果が検討されている。大規模植林による効果を検討する上では,現在の植物現存量を把握するとともに植林後のそれとを比較することが必要である。本研究では,西オーストラリア乾操地の天然林における最適な樹木重量推定式を明らかにし,植生タイプごとの植物現存量を推定することを目的とした。複数の樹種で伐倒調査を行い,対象地において特徴的な植生タイプにおける毎木調査および草本の刈り取り調査を行なった。その結果,以下の点が明らかになった。1)伐倒供試木において,どの部位の乾燥重量も[樹冠投影面積]と樹種に関係なく強い相関を示した。これにより調査地域の植物現存量は樹冠投影面積で推定可能であり,リモートセンシングにより対象地の植物現存量を推定することが可能であることが示された。2)ユーカリ林,密なアカシア林,疎なアカシア林の植物現存量はそれぞれ14kg/m^2,6〜7kg/m^2,0.5〜5kg/m^2程度であり,典型的な砂漠の植物現存量よりも大きな値を示していた。これは特殊な立地環境が関係していると考察された。