森林立地
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中国黄河河口域における塩類土壌の理化学性に及ぼす脱塩・植栽の影響
伊與田 朱美尹 建道戸田 浩人生原喜 久雄峰松 浩彦
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2004 年 46 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

中国の黄河河口域において,塩類土壌の灌水による脱塩と緑化木植栽が土壌に及ぼす影響を明かにするため,植栽区(灌水による脱塩後に樹木を植栽し2〜6年後)3ヶ所と対照区(無処理で植生は草木と低木がわずかにある程度)2ヶ所の土壌の理化学的性質を調査した。植栽区は対照区に比べて,土壌表層(0〜30cm)で粗孔隙率,全炭素,全窒素および交換性Ca濃度が高かったが,土壌下層(30〜60cm)では土壌硬度およびpHが高く,植裁区のpHは8.5を超えていた。また,植栽区では対照区よりも全層(0〜60cm)で水飽和抽出液の電気伝導度(ECe)および陽イオン交換容量に対する交換性Naの割合(ESP)が著しく低かった。対照区のECeは30〜70mS/cmであり,ESPは約20%でソーダ質の塩類土壌に分類されるのに対して,植裁区のECeは約4mS/cmであり,ESPは4〜8%であった。以上より,植栽区では脱塩・植栽によって改善された土壌理化学性が,少なくとも2〜6年間は維持されていることが示唆された。また,樹木の植栽はリター等による低C/N比の有機物の供給を促し,土壌肥沃度の向上が期待できると考えられた。植栽区の表層は耕耘と灌水によって,透水性が改善されるとともに塩類(特にNa)が溶脱されていたが,下層では土壌のアルカリ化と土壌硬度の上昇が起きている可能性が示唆された。

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© 2004 森林立地学会
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