森林立地
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モミの成長,生理活性及び外生菌根に対する土壌酸性化の影響
英賀 慶彦佐々木 廣海松下 範久丹下 健鈴木 和夫
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2004 年 46 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

土壌酸性化がモミ(Abies firma)の生育および外生菌根に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,人工酸性雨処理に対するモミ造林木の成長,生理活性や栄養状態,外生菌根形成状況の変化について調べた。東京大学秩父演習林の21年生モミ造林地において,酸性雨処理を施した処理区を設けた。人工酸性雨処理は,1994年から6年間にわたって,試験地の降水量相当としてほぼ5月〜10月に週1回pH2の硫酸を処理区の地表1m^2あたり100Lの割合で散布した。処理1年後には,処理区土壌の表層ではpH(H_2O)が6.5程度から5.0以下へと低下し,交換性塩基類の濃度の大幅な低下とともに交換性Alや交換性Mnの顕著な溶出が認められた。モミ地上部においては,処理区の葉でMn濃度が顕著に増加する傾向がみられたが,処理6年後でも葉の水ポテンシャル,クロロフィル蛍光,光合成速度の生理活性には影響は見られなかった。一方,外生菌根相においては,処理2年後にCenococcum geophilumの菌根が処理区で優占的に観察されたほか,タイプ数の減少および種組成の変化が認められた。また,ほぼすべての処理区で外生菌根形成率が対照区に比べて低下した。このことから,酸性雨処理による土壌酸性化は,地上部の生理活性の変化に先立って,根圏の外生菌根菌に大きな影響を及ぼすことが明らかにされた。

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© 2004 森林立地学会
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