2009 年 51 巻 2 号 p. 105-115
東南アジアでは,人為的な撹乱により多くの低地熱帯雨林が荒廃しており,その修復のためにはフタバガキを用いたエンリッチメント・プランティング手法の開発が必要である。本研究では,マレーシア・サラワク州ニア森林保護区内の焼畑放棄草地,二次林,択伐林に植栽した6種のフタバガキ苗の枯死率と成長に光と土壌が与える影響について調査を行った。相対照度は,林内より草地で極端に高かった。しかし,土壌特性については顕著な差は見られなかった。調査期間内(81ヶ月間)の苗の枯死率,高さ,直径は,いずれも草地で高く林内で低かった。草地では,はじめの24ヶ月間で強光により多くの苗が枯死したが,生残苗は高い成長率を示した。草地での植林は,成長の良い個体が少数でも生存すれば十分に森林を修復できると考えられた。一方,林内では草地より照度が低いため苗の生存率は高かったが成長率は低かった。二次林では,先駆樹種が植栽苗の保育樹としての役割を果たしており,高い生存率を保ったと考えられた。必要に応じて先駆樹の間伐を行うことにより植栽苗の生育を促進できると考えられた。一方,種間差も観察され,Parashorea macrophyllaは二次林での生存率が高いものの,極端な暗所での生育はよくなかった。また,Shorea macrophyllaは,野生動物の食害が観察された。Shorea virescensは,草地での成長率が高かった。今後植林の際には,このような種特性を考慮し植栽種の選択を行う必要があるだろう。