2011 年 53 巻 1 号 p. 9-15
タカノツメGamblea innovans(別名:Evodiopanax innovans)は,日本全国の二次林に広く分布する落葉広葉樹であり,重金属汚染地に生育する個体ではカドミウム(Cd)と亜鉛(Zn)を集積することが報告されている。この植物を重金属汚染土壌のファイトレメディエーションに利用していくためには,重金属の集積特性や植物体内での輸送に関する基礎的な知見が必要である。本研究では,フィールド観察とタカノツメ苗木を用いた2種のポット実験の結果を報告する。ポット実験では,重金属汚染地に自生していたタカノツメ苗木と,非汚染地に自生していた苗木を用いた。非汚染地でのフィールド観察により,Cd,Zn,Mnの集積特性が重金属汚染地のタカノツメに限られたものではなく,一般性のある特徴であることが確認された。またポット実験より,根や樹幹に存在する重金属は易動性を持ち,新しく展開した葉に輸送されることが明らかとなった。これは,根から地上部への導管を通してのゆっくりとした輸送であるといえる。