2011 年 53 巻 1 号 p. 17-22
切り捨て間伐で林地に還元された枝条は,その多くが地面に触れず離れた状態で存在する点に注目し,間伐後の枝条の分解にともなう窒素動態を調べた。間伐で緑葉として林地に還元された窒素量は84kg ha^<-1>で,その67%が地面に接地せず空中に存在していた。緑葉を入れたリターバッグを空中と地表に設置し,分解速度と分解にともなう土壌への窒素供給量を調べたところ,分解速度は設置後1年間は処理による違いはなかったが,2年後は地表で有意に速かった。残存葉の窒素含有率は設置直後から増加したが,1年後は地表の方が空中より有意に高かった。分解初期には処理に関わらず窒素を取り込み残存葉に存在する窒素量は間伐で還元された窒素量より増加した。残存葉の窒素量の増加は空中では6ヶ月後まで,地表では1年後まで続いた。分解にともなう土壌への窒素供給の開始は地表の方が空中より遅くなった。しかし,地表では1年後〜2年後の分解速度が空中より速まるため,設置後2年間の土壌への窒素供給量は空中より地表で多く,その割合は64%であった。